埋木帖

政策をテーマにエッセイをつらつら書きます

19歳が選挙に行かないのは19歳のせいなのか?

f:id:hodakakato0816:20171025164755j:plain

18歳選挙権を宣伝するためのポスター、学校を中心に配られたそうですが、一部では広瀬すずさん目的で盗まれたこともあるとかないとか

 低い19歳の投票率

先日の衆院選は、選挙権年齢の引き下げ(18歳選挙権)が行われてから2回目の国政選挙でした。総務省は、24日に18歳、19歳の投票率を速報値として発表しました。

 

www3.nhk.or.jp

 

これによると、18歳の投票率は50.74%、19歳の投票率は32.34%、10代全体では42.51%にとどまったとのことです。

全体の投票率は53.68%だったので、これと比較すると18歳は遜色ない結果ですが、19歳の落ち込み方が目につきます。また、昨年の参院選でも18歳は51.28%であったのに対し、19歳は42.30%で19歳の投票率が低い傾向は同じです。

この時の19歳の低投票率について、読売新聞は

高校などで主権者教育を受ける機会の多い18歳と、大学生や社会人が多い19歳で、差がある傾向が明らかになった。

 

2016年7月11日 読売オンライン

http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/2016/news/20160711-OYT1T50218.html

として、主権者教育の有無が投票率を分けたのではないかと分析しています。

しかし、主権者教育を行えば投票率が高くなり、行わなければ投票率が低くなるなら、突然の解散総選挙となり主権者教育を昨年並みに行えなかった18歳の投票率も相当程度下がるはずです。しかし、実際には約50%とほぼ同じ水準をキープしています。

 

昨年投票したうちの4割が棄権した

また、何よりも考えるべきはコーホート(世代)での結果です。

昨年の参院選は2016年7月10日に行われましたが、今回の衆院選はその約1年3か月後の2017年10月22日に行われました。

つまり、昨年18歳で投票した若者のほとんどが、今年は19歳となって投票したわけです。

このことは、昨年の参院選の18歳の投票率と今年の衆院選の19歳の投票率を比較すると同一世代の人たち(この場合、1998年頃に生まれた世代)が、どの程度投票したのか見ることができることを意味します。

f:id:hodakakato0816:20171025164741p:plain

このことを念頭に置いて、もう一度投票率を見てみると、昨年の18歳の投票率は51.28%、今年の19歳の投票率は32.34%と、なんと18.94ポイントも減少しています。これは、昨年の衆院選で投票した人のうち、約37%が今年は投票に行かなかったことになります。

 

この落ち込み方は、やや異常です。

 

確かに19歳になった彼・彼女らは大学進学や就職など18歳の時と同じ水準の主権者教育を受けたわけではないでしょう。

しかし、彼・彼女らは昨年の“はじめての18歳選挙権”を経験した世代、つまり相当の啓発活動が行われ、それを受けた世代です。

主権者教育の効果が1年ももたないという可能性はありますが、それでも昨年投票したうちの4割近くが棄権したことの説明としては、やや説得力に欠けます。

 

これは、彼・彼女ら自身の問題等より、制度的な問題と考えたほうが自然です。

 

最有力仮説は「住民票」か?

では、19歳が低投票率になる制度的問題とは何でしょうか?

4割近くが投票しなかったことの説明として有力なのは、やはり「住民票」の問題でしょう。

18歳なら、多くの場合、まだ高校に在学し、親元で暮らしているでしょう。しかし、19歳だと大学等への進学や就職で親元を離れるケースが少なくないはずです。

この時、住民票を下宿に移さず、親元に残したままにするケースが多いです。この理由としては、手続きの煩雑さや社会保険料の支払いなど様々な要因が考えられます。

私も地方から東京の大学に進学し、下宿していますが、下宿探しの時に不動産業者に「住民票を移すべきか」と聞いたときは「大学生だと、ほとんどの人が移さないですね」と言われた経験があります。

そして、選挙は住民票のある自治体で行うのが原則です。夏休みなどの長期休暇中の選挙なら、帰省して投票ということもありえるでしょうが、10月のような学期中だと、選挙のためだけに帰省するとは考えにくいです。

 

では、データを見ながら、少し検証していきましょう。

下表は、昨年の参院選における18,19歳の投票率都道府県ごとに見たものです。

 

f:id:hodakakato0816:20171025164746p:plain

減少率で色付けされていのは平均よりも減少率が小さい、つまり18歳と比較して19歳も投票した人が多い地域です。これを見てみると、首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)、名古屋圏(岐阜・愛知・三重)、関西圏(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)などの大学が集中している地域および自宅からの通学が可能な地域の減少率は低く抑えられています。

また、自県進学率(出身高校と入学先の大学が同一都道府県にある入学者の比率、平成28年学校基本調査)が高い北海道や沖縄も減少率は低い傾向にあります。

 

出来れば、ここで都道府県ごとに自県進学率と減少率で散布図を作ったり、回帰分析をしたりしたいところですが、大都市圏の越県通学が多いせいか、自県進学率と減少率が思うように関係が見出しにくいです。(いいデータないでしょうか?)

 

しかし、この地域性を見るだけでも、住民票は有力な仮説とは言えそうです。

もちろん、本来は、公共サービスをきちんと受けられるようにするためにも住民票は下宿先に移すべきですし、そうでなくても不在者投票制度などはあります。

しかし、社会保険料の支払いが大きくなったり、下宿先からの不在者投票制度の利用について選管ごとに判断がまちまちだったりするため、現状のままでは19歳の低投票率は改善しにくいでしょう。

 

www.asahi.com

 

今回、唐突な解散総選挙でしたが、2年連続の国政選挙となり、その結果、同じコーホートで1歳の差にも関わらず4割近くが棄権したという事実が白日のもとにさらされました。

(国政選挙は、衆院選だとバラバラ、参院選でも3年ごとで比較がしにくいうえ、20歳以上は細かくても5歳ごとしか年代別投票率が公開されておらず、今回のように1歳ごとの差がデータとして出ることは相当、貴重です。)

もう少し、慎重な検証が必要ですが、住民票が理由で低投票率が起こっているなら、なんらかの制度的対応が必要でしょう。

投票率の問題は、若者のせいだけでは語れないのですから。

 

参考

総務省「第24回 参議院議員通常選挙 発表資料」

http://www.soumu.go.jp/senkyo/24sansokuhou/

文部科学省「学校基本調査」

http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 

画像出典

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20160619/k00/00m/010/025000c