埋木帖

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「シン・ゴジラ」で学ぶ行政学 ~第2回 巨災対メンバーから見る国家公務員~

シン・ゴジラ」を通して、行政学を学ぼうということで、第2回の今日は巨災対メンバーを通して、国家公務員のキャリアについて考えていこうと思います。

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そもそも巨災対とは?

まず、「巨災対」とは、ゴジラへの対応策を立案するための組織として設置された「巨大不明生物特設災害対策本部」の略称です。

主人公である矢口蘭堂内閣官房副長官(政府担当)は、この巨災対の事務局長に就任し陣頭指揮にあたります。

 

この巨災対、おそらく首相官邸に設置された「政策会議」の一つだろうと考えられます。

通常、政策の立案は所管官庁の原課(〇〇省××局~課)で行います。

しかし、内閣として特に重要な政策については、総理大臣がよりリーダーシップを発揮しやすい「政策会議」という形で、また別に検討の場を設置します。

例えば、内閣府に設置されている「経済財政諮問会議」は、総理大臣を議長とする会議体で財政に関する基本方針を示す場となっています。

シン・ゴジラ」における巨災対も、おそらく重要な政策として、首相官邸に設置された「政策会議」と考えられます。

実際、実務を担っている矢口は「事務局長」という肩書にとどまっていますが、形式的に大河内総理が「本部長」となっていると考えられます。

 

ちなみに、この「政策会議」は、近年になって特に活用されるようになってきています。

古くは、橋本内閣における第二臨調や小泉内閣経済財政諮問会議は、その典型例ですが、第二次安倍内閣は、政策会議の活用がより顕著で、「日本経済再生本部」「産業競争力会議」など様々な政策会議が設置され、政策の立案を行っています。

 

巨災対のメンバーは何者か

さて、巨災対は、政治家である矢口が事務局長となっていますが、現場を動かしているのは、基本的に国家公務員たちです。

 

例えば、

・・・などです。

 

ここで注目したいのは、彼らの国家公務員としての種別です。

国家公務員には、「総合職と一般職」「事務官と技官」という2つの軸があります。

いずれも、採用形態による違いです。

 

まず、「総合職」は将来の幹部候補として採用される区分で、実際の政策の企画立案を担います。(旧の国家公務員第Ⅰ種試験合格者にあたります)

一方、「一般職」は主に事務処理を担当する区分です。(旧国家公務員第Ⅱ種試験合格者)

総合職は、幹部候補なので昇進のスピードは速く40歳になると基本的に課長になります。対照的に、一般職が課長になるのは定年間際で、課長が事実上の出世の最高位です。

 

また、「事務官と技官」は採用試験の試験科目の違いです。

 

事務官」は「法律」「行政」「経済」などの、いわゆる文系科目の試験を受けて合格した人たちで、国家公務員のトップである事務次官は基本的に総合職の事務官が就任します。

一般的にイメージする「官僚」は、この総合職で採用された事務官でしょう。

 

一方、「技官」は、法律等以外の試験区分「土木」「機械」「建築」などの、いわゆる理系科目の試験で受かった人たちです。

技官は、専門的な知識を使って政策立案に寄与することを求められており、人事異動に際しても同じような部署間を移動していき、専門知識をより深めていきます。

しかし、出世の面では事務官に比べると冷遇されており、基本的に省の事務次官に技官が就任することはありません。

 

しかし、技官にも例外があります。森課長の「医系技官」です。

医系技官は、医師・歯科医師免許を持ち、一般の国家公務員試験とは違う試験によって採用され、課長級までの昇進が約束されています。また、最近になって厚生労働省事務次官級の「医務技監」というポストが設置され、総合職の事務官並みの出世コースが用意されています。

医系技官の特徴としては、やや年長であることです。彼らは医学部や歯学部出身者なので、18歳で大学に入学しても、6年間の課程を経て、24歳になっています。さらに医系技官の多くは大学採用後7~8年たった人も採用されるので、30歳前後での入省となります。総合職の事務官が最年少で、22歳で入省するのと比べるとその差は明らかです。

 

巨災対のメンバーを見てみると、明らかに生物学やエネルギーなど専門知識を有しており、多くが技官と推測されます

また、比較的若いにも関わらず課長や課長補佐に昇進しているので総合職採用と考えられます。

政策の企画立案は総合職採用の課長補佐クラスが主に担当するので、巨災対のメンバーは本来の所属先でも、政策の企画立案を担っていると考えられ、巨災対は専門的知識を駆使して政策対応を行う総合職・技官の集団であると考えられるのです。

未曽有の災害への対策を立案するという意味では最適なメンバーと言えるのではないでしょうか。

 

まとめると、巨災対は本部長を大河内総理とする官邸に設置された政策会議の一つで、実務は政治家の矢口と総合職で採用された技官を中心とする国家公務員によって担われていると考えられます。

 

画像出典:巨災対が示した成功するチームの作り方:日経ビジネスオンライン