埋木帖

政策をテーマにエッセイをつらつら書きます

原理原則論としての「政策の目的」

「政策」という言葉自体は、「安全保障政策」や「農業政策」などの言葉でよく耳にすると思います。

では、「政策」はどう定義できるのでしょうか?

論者によって定義は若干変わってきますが、例えば、秋吉ら(2015)では、

 

公共的問題を解決するための、解決の方向性と具体的手段

 

と政策を定義しています。

つまり、政策は「公共的問題解決のため」に行われることと言えます。

では、「公共的問題」とは何でしょうか?

一般には、「社会で問題だと認識された問題」とされますが、原理原則から言えば、私は「市場では解決できない問題」を「公共的問題」と捉えるべきだと思います。

 

そもそも論として、政府がある理由は「市場(民間)だけに任せておくと生じる不利益を防ぐため」です。

経済学の父と言われるアダム・スミスは、市場を通じて行われる資源配分の効率性を指摘しました。ここでいう、市場の効率性とは、「無駄なく個人の効用を最大化できる」という意味です。つまり、効率性を追求するには、市場に任せておくのがよいと考えたのです。

このように、市場は効率性を達成するには、とてもよい資源配分の仕方です。しかし、「公平性」を市場に求めることはできません。もし、私たちが効率性の追求だけでよいと考えるなら、いいのですが、実際には人々は公平性という観点をとても重視します。市場だけに任せておいては公平性を達成することはできませんから、市場ではない仕組みである政府によって、公平性を実現するわけです。

例えば、所得税累進課税社会福祉生活保護などは所得の再分配によって公平性を担保しようとしています。

つまり、政策の目的として第一に挙げられるのは、市場では実現できない「公平性を実現すること」と言えるでしょう。

 

では、政策の目的は公平性の担保だけでよいのかと言えば、そうではありません。

 

先ほど、市場は効率性を実現するには最も適した資源配分の方法だと言いましたが、市場にも限界があります。市場でさえも、いくつかの場合には、効率性を達成できない(すなわち、資源配分の無駄)を生じさせてしまうのです。市場が不効率になる場合は大きく分けて2つです。1つ目は、「不完全競争市場」です。市場の効率性は、完全競争市場、すなわち複数の売り手と買い手が存在し、それぞれの行動が全体の価格に影響を与えない市場で確保されます。しかし、現在の携帯キャリアが事実上3社によって占められている寡占市場や、1社しか売り手がいない独占市場などの不完全競争市場では、効率性は実現されません。この不完全市場への対応も政府の仕事です。すなわち、独占や寡占のような状況にならないように規制を行うのです。

最近の例ですと、公正取引委員会十八銀行ふくおかフィナンシャルグループの経営統合に待ったをかけたことは、この不完全競争市場を防ぐための政策と言えます。もし、十八銀行とふくおかFGの経営統合が実現されると、この経営統合された新たな金融機関の長崎県内における融資シェアが高くなりすぎ不完全競争市場となってしまうため、これを防いだのです。

市場が不効率になる2つ目の理由は「市場の失敗」です。「市場の失敗」とは、完全競争市場が実現していたとしても、いくつかの場合では、無駄が発生してしまうことを言います。具体的には、公共財、外部経済、情報の非対称性、費用逓減産業です。

それぞれの詳しい説明は、また別の投稿に譲りたいと思いますが、例えば公共財の話をすれば、防衛政策はまさに国防が公共財であるがために政府によって行われる政策の典型例と言えます。つまり、他国からの武力攻撃への対応を行うことの利益は、特定の誰かに享受されたり、逆に利益を享受させなかったりすることはできません。例えば、弾道ミサイルを迎撃したことによって得られる平穏な生活を誰かに送らせないことはできず、その地域の人々すべてに享受される利益です(非排除性)。また、その利益は誰かが享受すると、ほかの人が享受できなくなる類のものでもありません(不競合性)。このような性質をもつ財・サービスは市場を通じてはうまく供給できないため、政府がその担い手となるのです。

 

つまり、政策の目的をまとめると、「市場ではできない利益の追求」となり、これは大きく分けて

1.公平性の実現

2.効率性の確保

の2つあります。また、2.効率性の確保は、さらに

 2-1.不完全競争市場の回避

 2-2.市場の失敗への対応

の2つに分かれます。

このような場合には、政府しか対応ができない問題となるため、政策対応が必要になります。

裏を返せば、市場で対応できる問題に政府は手を出すべきではないとも言えます。

政策を見るときは、「これは政府でなければできないことなのか?」と考えてみるといいかもしれません。