埋木帖

政策をテーマにエッセイをつらつら書きます

消費低迷の犯人は消費税か? その3

前回までのおさらい

消費の低迷について、その原因について考えてきました。

ミクロ経済学の道具である予算制約線、消費可能領域を使って、消費税のほかに「所得の低下」が要因として挙がってきました。

 

実質賃金の推移をみる

早速、新たに容疑者として挙がってきた所得の低下について見ていきましょう。

ここでは、厚生労働省「毎月勤労統計調査」から実質賃金(季節調整済み)の推移を見てみます。

グラフはこんな感じです。

 

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いったん、実質消費のグラフを見直してみましょう。

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なんだか、消費支出のグラフに似ている気がしますね。

近似曲線も引いてみましょう。同じような右下がりの直線です。

 

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これを見る限り、実質消費と実質賃金がよく似ていることが分かりました。

この二つを重ねてみましょう。

 

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よく似ている・・・。

 

消費と賃金の関係性

ここまでは、視覚的に見てきましたが、ここからは数値を使って確認していきます。

まず、実質消費と実質賃金のグラフがよく似た動きをしていることは分かりました。

では、これを相関係数で確認しましょう。

相関係数とは、2つの変数の間の関係性の強弱を図るもので、-1から+1の範囲の値をとります。プラスなら正の相関、つまり一方が増えれば、もう一方も増えるといった同じような動きをすることを表します。逆に、マイナスなら負の相関といって、一方の変数ともう一方の変数が互いに反対の動きをすること表します。

相関の強さについては一般的に

相関係数の絶対値

 

0.9~1

きわめて強い相関がある

0.7~0.9

強い相関がある

0.4~0.7

相関がある

0.2~0.4

弱い相関がある

0~0.2

相関がない

 

と言われています。

相関係数Excelを使って、計算できます。

計算してみると「0.85」。強い相関があることが分かります。

ちなみに、相関の正負や強弱は散布図でも視覚的にわかりやすくなります。

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確かに、右上がりなので、まとまっているので正の強い相関だと言えそうです。

 

相関関係と因果関係、主犯か共犯か

ここまで見てきた結果、消費の低迷の犯人は実質賃金の低下であるように感じます。

しかし、ここで実質賃金を犯人と決めつけてよいのでしょうか?

ここまで見てきて言えることは「消費と賃金の傾向が似ている」ということだけです。

あくまで相関関係を言っているだけで、因果関係(賃金の低下が消費の低下の原因である)とは証明できていません。

また、最初の容疑者であった消費税が、本当に犯人でないということも厳密には言えていません。もしかしたら、主犯格とまでは言えなくとも共犯している可能性もあります。

このような「相関関係と因果関係の混同」や「どの要因の影響が最も大きいのか」という視点は、うっかりすると忘れてしまいがちなポイントです。

しかし、ここをしっかりさせておかないと政策的対応はできません。

なぜなら、政策の原則は「最も影響が大きい原因(主要因)を叩く」ことだからです。

ここまででやれたことは、あくまで「犯人っぽいやつが複数いた」ということ確認しただけなので、「何が原因で、どれが最も影響が大きいのか」は分かりません。

 

では、どうすれば主要因を特定できるのでしょうか?次回に続きます。